(解答例)
(解答例)
左が最も安定な配座、右が最も不安定な配座(の中のひとつ。)
(解答例)
(a) 最も安定な配座は、ねじれ形配座の中のひとつである。2-メチルプロパンでは、回転角をかえて書いたねじれ形配座は次の3つとなるが、このエネルギーはいずれも等しい。
(b) 最も不安定な配座は、重なり形配座の中のひとつである。2-メチルプロパンでは、回転角をかえて書いた重なり形配座は次の3つとなるが、このエネルギーはいずれも等しい。
(c)(d) グラフの概形および、その極大、極小点のエネルギーの相対値は次のグラフの通り。
(解答例)
(a) 最も安定な配座は、ねじれ形配座の中のひとつである。2,3-ジメチルプロパンでは、回転角をかえて書いたねじれ形配座は次の3つとなる。
左のものでは、Gauche 相互作用が2箇所、中央および右のものでは、Gauche 相互作用が3箇所存在する。従って、左のものが一番安定な配座である。
(b) 最も不安定な配座は、重なり形配座の中のひとつである。2,3-ジメチルプロパンでは、回転角をかえて書いた重なり形配座は次の3つとなる。
中央のものは、2組のメチル−メチルの重なり相互作用(11.0 kJ/mol)と、水素−水素の重なり相互作用(4.0 kJ/mol)を持つ。左右の2つは、1組のメチル−メチルの重なり相互作用と、2組の水素−メチルの重なり相互作用(6.0 kJ/mol)をもつ。
以上を考慮すると、中央のものが一番不安定な立体配座である。
(解答例)
上図のようになり、3組のメチル−メチルの Gauche 相互作用によるひずみエネルギーがあるから、全ひずみエネルギーは、
3.8 kJ/mol × 3 = 11.4 kJ/mol
である。
(解答例)
シクロヘキサン (cyclic-(CH2)6) は、シクロプロパン (cyclic-(CH2)3) に対して分子量が倍であるから、同じ重さ当たりではシクロプロパンはシクロヘキサンの2倍の物質量(モル数)を含む。
シクロヘキサン1モルを燃焼させたとき、ひずみエネルギーが0であるから、その反応熱は、
−ΔHcom(hexamethylene, straight-(CH2)6 )
に等しい。一方、シクロプロパン2モルを燃焼させたとき、その反応熱は、
2 × [−ΔHcom(cyclopropane, cyclic-(CH2)3 )]
= 2 × ( [−ΔHcom(trimethylene, straight-(CH2)3 )] + E環ひずみ )
に等しく、環ひずみエネルギー E環ひずみ は 115 kJ/mol である。
[−ΔHcom(trimethylene, straight-(CH2)3 )] × 2 = [−ΔHcom(hexamethylene, straight-(CH2)6 )]
であるから、1モルのシクロヘキサンと2モルのシクロプロパンの燃焼熱の差は、次式で表される。
[−ΔHcom(cyclohexane, cyclic-(CH2)6 )] − 2 × [−ΔHcom(cyclopropane, cyclic-(CH2)3 )]
= 2 × E環ひずみ(cyclopropane) = 230 kJ
つまり、環ひずみのないシクロヘキサンを燃焼させたよりも、環ひずみの大きいシクロプロパンを燃焼させたときの方が(環ひずみエネルギーの分だけ)発熱量が多い。このため、燃料としては、シクロプロパンの方が効率が良いと言える。
hydrocarbons | −ΔHcom / kJ mol-1 |
---|---|
methane, CH4, (g) | 890 |
ethane, C2H6, (g) | 1560 |
propane, C3H8, (g) | 2220 |
butane, C4H10, (g) | 2878 |
pentane, C5H12, (g) | 3537 |
cyclopropane, C3H6, (g) | 2091 |
cyclohexane, C6H12, (l) | 3920 |
(解答例)
シクロプロパン分子中に、水素−水素重なり形の相互作用は6組ある。(ひとつの水素に対し、2つの隣接炭素上の水素と互いに重なり形相互作用するので、環の上で3組、下で3組ある。)
したがって、重なり形相互作用によるひずみエネルギーは、
6 × 4.0 kJ/mol = 24.0 kJ/mol
である。これは、シクロプロパンの全環ひずみ 115 kJ/mol に対して 20.9 % である。残りの79.1 % は、結合角のひずみによるものである。
(解答例)
cis-1,2-dimethylcyclopropnane のもつ全環ひずみエネルギー:126 kJ/mol
水素−水素の重なり形相互作用 × 3 = 12.0 kJ/mol
水素−メチルの重なり形相互作用 × 2 = 12.0 kJ/mol
メチル−メチルの重なり形相互作用 × 1 = 11.0 kJ/mol
結合角のひずみによるもの(シクロプロパンと同じとする) 91 kJ/mol
trans-1,2-dimethylcyclopropnane のもつ全環ひずみエネルギー:123 kJ/mol
水素−水素の重なり形相互作用 × 2 = 8.0 kJ/mol
水素−メチルの重なり形相互作用 × 4 = 24.0 kJ/mol
結合角のひずみによるもの(シクロプロパンと同じとする) 91 kJ/mol
以上の計算から、メチル基間の重なり形相互作用をもつ cis- 体の方がより大きな燃焼熱をもつ。
(解答例)
平面形を仮定すると、シクロペンタン中には全部で10組の水素−水素の重なり形の相互作用が存在するから、
10 × 4.0 kJ/mol = 40.0 kJ/mol
の(重なり形相互作用に由来する)ねじれひずみが存在することになる。
これが折れ曲がりにより 26.0 kJ/mol まで軽減されたとすれば、35 % の軽減である。
環ひずみは、結合角のひずみと重なり形相互作用によるねじれひずみからなる。
この計算では、平面型でも、折れ曲がったあとでも、結合角のひずみ無視できると仮定している。これは、正五角形の内角が 108 度であり、sp3 混成炭素の結合角と近いためである。(教科書 114 ページ 上半部分)
(解答例)
教科書の解答例にあるように、「2つのメチル基がより離れている (a) の配座の方が安定である。」
C3 炭素を C2-C1-C4 の3つの炭素のつくる平面に対して、持ち上げる、または下げることによって2つの立体配座 (b) および (a) ができるものと考えよう。
この2つの立体配座について、シクロブタン環の C2-C1 軸(緑矢印の方向)に沿った Newman 投影図を書くと、次図のようになる。
メチル基と水素は重なり形の相互作用が小さくなるように、C2-C1 軸が回転し(その結果として C3 炭素が上がったり、下がったりして)これらの立体配座を達成しており、完全な重なり形ではない。(教科書 118ページ)
このときに、図から判るように、C1 上のメチル基が隣接する炭素 C2 上の水素との間で持つ重なり形相互作用の大きさは、いずれの立体配座においても同じである。
しかし、立体配座 (b)(図、中央)では、C2-C3 結合に注目すると、C1-CH3 結合と C1-C4 結合の間にはさまれており、C1-CH3 結合との間に Gauche 的な相互作用を生じている。これが、立体配座 (a) よりも (b) の方が不安定となっている理由である。
(解答例)
図、左の2つが環の反転により生じる配座異性体。上の配座での水酸基がアキシャル位、下の配座での水酸基はエカトリアル位にある。
環の面の上方に水酸基をもつシクロヘキサノールについて、炭素の番号をつけて環の反転の前後での対応を示してある。また、下方、右の立体配座は、環の上下を逆になるように、C1-C4軸に沿って回転させたもので、水酸基は同じエカトリアル位であるが、環の面の下方になっていることが判る。
(解答例)
図、上段左は、1-methyl 基と 4-methyl 基の位置の組み合わせが(下、上)であるが、右図では、C1-C4 軸に沿った回転(または、環に垂直な軸に沿った回転)により(上、下)となっているが、左右とも同じものである。これらにおいては、2つのメチル基はともにエカトリアル位にある。
これに対し、これを環反転させた図下段では、1-methyl 基と 4-methyl 基の位置の組み合わせが(下、上)のままであるが、2つのメチル基ともアキシャル位にある。
(解答例)
![]() |
![]() | ||||
反転前 | 反転後 | 光学異性体 | |||
---|---|---|---|---|---|
1-緑 | 下 | アキシャル | エカトリアル | 上 | エカトリアル |
2-赤 | 下 | エカトリアル | アキシャル | 上 | アキシャル |
4-青 | 下 | エカトリアル | アキシャル | 上 | アキシャル |
ただ単に、環の反転でアキシャルとエカトリアルが入れ替わる、とだけ考えると、右のような光学異性体を描くことになってしまう。これは、環の反転によって生じる構造とは、空間内の平行移動や回転によって重ね合わせることは不可能である。 | |||||
![]() | 反転後 | ||||
下 | エカトリアル | ||||
下 | アキシャル | ||||
下 | アキシャル | ||||
変則的だが、このような書き方もできる。環の反転(環を構成する炭素の作る平均的な面よりも上にあった炭素(C2, C4, C6)は環の反転により下に、下にあった炭素(C1, C3, C5)は上にくる)を、同じ形のいす形シクロヘキサンの、炭素番号を一つずらして表現している。なお、環の反転で置換基の結合の上下は変化せず、アキシャルとエカトリアルが入れ替わっている。 |
(解答例)
1-置換シクロヘキサンの、C1-C2(および C5-C4)軸方向からみた Newman 投影式を、置換基がエチル基、イソプロピル基、t-ブチル基と変化させて示した。
この図(および、ヒントで示した置換基がメチル基の時の Newman 投影式)を比較すると、t-ブチル基の時以外は、ゴーシュ相互作用の大きさが、ほぼ同じであることが予想できる。
また、C1-置換基 軸の方向から(すなわち、シクロヘキサンの環の平面に(ほぼ)垂直な方向から)眺めた時の、1,3-ジアキシャル相互作用の様子を模式的に示した。ただし、白丸は、3位、および5位のアキシャル水素である。置換基は、左より、水酸基、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基である。
水酸基では、酸素上の(水素より小さな)孤立電子対が3位、および5位のアキシャル水素と反発するだけであるのに対し、メチル基、エチル基、イソプロピル基では、置換基の中の C-H 結合が、また、t-ブチル基では、置換基の中の C-CH3 結合が、それぞれ3位、および5位のアキシャル水素と反発する。
これらの説明と、教科書 p126 表4.2 の値との対応を確認しておくこと。
(解答例)
1-置換シクロヘキサンの、C1-C2(および C5-C4)軸方向からみた Newman 投影式を、置換基が水素およびシアノ基の場合について示した。シアノ基は直線状の構造(R-C-N の結合角が180度)であるから、図のようにまっすぐに伸びており、その結果として 1,3-ジアキシャル相互作用は小さい。(4.14 のヒントの、メチル基の場合の Newman 投影図と比較してみること。)
(解答例)
表より、1-bromocyclohexane のもつ立体ひずみは、2 × 1.0 kJ/mol = 2.0 kJ/mol となる。
これを、教科書 p125 の図 4.18 にあてはめると、(下巻、付録D、p1281 に用意された解答とは若干ずれがあるが)臭素がアキシャル位にくる配座異性体の割合(不安定な異性体と書かれた赤い線から読む)は、およそ 25 % となる。
(発展)で述べた計算式を用いるなら、300 K において、>臭素がアキシャル位にある配座異性体の割合は、 31 % と計算される。
1 / ( 1 + e(2.0 / 2.5)) = 0.310
substituent | steric strain / kJ mol-1 | アキシャル体の存在割合 / % |
---|---|---|
-H | 0 | 50.0 |
-F | 0.5 × 2 | 40.1 |
-Br | 1.0 × 2 | 解答例参照 |
-OH | 2.1 × 2 | 15.7 |
-CH3 | 3.8 × 2 | 4.6 |
-CH2CH3 | 4.0 × 2 | 3.9 |
-CH(CH3)2 | 4.6 × 2 | 2.5 |
-C6H5 | 6.3 × 2 | 0.64 |
-C(CH3)3 | 11.4 × 2 | 0.011 |
(解答例)
下図には、置換基と 1,3-ジアキシャル相互作用する水素を書きこんである。
stable conformer | less stable conformer | ratio | ||
---|---|---|---|---|
(a) trans-1-chloro-3-methylcyclohexane | ||||
![]() | 2.0 kJ/mol | ![]() | 7.6 kJ/mol | ΔE = 5.6 kJ/mol 90.4 : 9.6 |
(b) cis-1-ethyl-2-methylcyclohexane | ||||
![]() | 7.6 kJ/mol + 3.8 kJ/mol* |
![]() | 8.0 kJ/mol + 3.8 kJ/mol* |
ΔE = 0.4 kJ/mol 54.0 : 46.0 |
(c) cis-1-bromo-4-ethylcyclohexane | ||||
![]() | 2.0 kJ/mol | ![]() | 8.0 kJ/mol | ΔE = 6.0 kJ/mol 91.7 : 8.3 |
(d) cis-1-tert-butyl-4-ethylcyclohexane | ||||
![]() | 8.0 kJ/mol | ![]() | 22.8 kJ/mol | ΔE = 5.6 kJ/mol 99.7 : 0.3 |
(解答例)
化合物名 : 1-chloro-2,4-dimethylcyclohexane
![]() | |||
反転前 | 置換基 | 反転後 | |
---|---|---|---|
アキシャル | 1-chloro | 下 | エカトリアル |
2 × 1.0 kJ/mol | − | ||
エカトリアル | 2-methyl | 下 | アキシャル |
− | 2 × 3.8 kJ/mol | ||
アキシャル | 4-methyl | 上 | エカトリアル |
2 × 3.8 kJ/mol | − | ||
1,3-ジアキシャル相互作用によるひずみエネルギーの合計 | |||
9.6 kJ/mol* | ΔE = 2.0 kJ/mol | 7.6 kJ/mol* |
(解答例)
いす形の立体配座では、2つの tert-butyl 基のうちいずれかがアキシャル位にくることになり、かなりの立体ひずみを持つことになる。ねじれ舟形の配座では、2つの tert-butyl 基がどちらもエカトリアル位にくることができるために、いす形からねじれ舟形になるときのひずみを補って安定となることができる。
定性的には、そういうことなのだが、定量的な説明をしようとするとうまくいかない(…気がする)。下の表参照。
trans-1,3-di-tert-butylcyclohexane の、いす形および(ねじれ)舟形2種の3つの配座異性体がある。( 1-tert-butyl 基は環よりも上、3-tert-butyl 基は環よりも下とした。この上下関係が逆であるものは、光学異性体となる。また、いす形と舟形のそれぞれの配座異性体は、C2, C3, C5, C6 のつくる平面よりも、C1, C4 をそれぞれ上下させて生じさせた。)
配座異性体 | その他のひずみ | 置換基 | |
1-tert-butyl 基 | 3-tert-butyl 基 | ||
![]() |
いす形 − | エカトリアル位 − | アキシャル位 2 × 11.4 kJ/mol |
いす形 − | アキシャル位 2 × 11.4 kJ/mol | エカトリアル位 − | |
上のいす形の2つは、実は同じものである。 ( C2-C5 軸に沿って180度回転させることで、互いに重ね合わせることができる。) | |||
![]() |
ねじれ舟形 23 kJ/mol | エカトリアル位 − | エカトリアル位 − |
ねじれ舟形 23 kJ/mol | アキシャル位 C4-アキシャル水素との相互作用 | アキシャル位 C2,C5,C6-アキシャル水素との相互作用 |
(解答例)
cis-decaline (上)と trans-decaline (下)の構造を示す。左右とも同じものを表しており、左図、矢印の方向からの視点で見たものが右図となる。
橋頭位の水素は赤い結合で表した。これがシスになっているものが cis-decaline 、トランスになっているものが trans-decaline である。
ここで、黒で示したシクロヘキサン環を中心に考え、これに結合している置換基についてまとめておく。
C1−Ha | C1−CH2(C10) | C6−Hb | C6−CH2(C7) | |
cis-decaline | 上 | 下 | 上 | 下 |
アキシャル | エカトリアル | エカトリアル | アキシャル | |
アキシャル位の置換基は水素なので、1,3-ジアキシャル相互作用をもたない。 | アキシャル位の置換基は、青で示した環の一部をなすメチレン( -CH2- )なので、1,3-ジアキシャル相互作用がある。 | |||
trans-decaline | 上 | 下 | 下 | 上 |
アキシャル | エカトリアル | アキシャル | エカトリアル | |
アキシャル位の置換基は水素なので、1,3-ジアキシャル相互作用をもたない。 | アキシャル位の置換基は水素なので、1,3-ジアキシャル相互作用をもたない。 |
(解答例)
trans-1-chloro-3-methylcyclohexane
置換基 | 1-chloro | 3-methyl |
環平面の | 下 | 上 |
a/e | エカトリアル | アキシャル |
置換基 | 1-chloro | 3-methyl |
環平面の | 下 | 上 |
a/e | アキシャル | エカトリアル |
(解答例)
環の反転によっても、置換基の上下は入れ替わらない。従って、
置換基の色 | 2位-赤 | 4位-黄 | 1位-青 |
環平面の上下 | 上 | 上 | 上 |
環反転前 a/e | アキシャル | アキシャル | エカトリアル |
環反転後 a/e | エカトリアル | エカトリアル | アキシャル |
(解答例)
![]() | |
α-glucose | β-glucose |
(解答例)
(a) 下の図の2種類のねじれ形配座が考えられるが、より安定なのは左。
(c) のような定量的な見積もりにより、これら二つの配座の間のエネルギー差は、3.8 kJ/mol。これは、(発展)で示した根拠によれば、2つの配座だけを考えたとして、左のより安定な配座にある分子は右のねじれ形配座にある分子の5倍程度存在することを示す。
(b) 下の図の2種類の重なり形配座が考えられるが、より不安定なのは右。
一番不安定な重なり形配座と一番安定なねじれ形配座のエネルギー差は、17.2 kJ/mol。この値は、2つの配座だけを考えたとして、安定なねじれ形配座にある分子の数が、不安定な重なり形配座にある分子の約1000倍であることを示す。
(c) 以下のようになる。
ただし、以下のようなエネルギーの見積もりによる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−メチル 0 kJ/mol
メチル−メチル 3.8 kJ/mol (青矢印)
重なり形相互作用:
水素−水素 4.0 kJ/mol (緑矢印)
水素−メチル 6.0 kJ/mol (橙矢印)
メチル−メチル 11.0 kJ/mol (赤矢印)
(解答例)
2,3-dimethylbytadiene の構造は、以下の通り。
従って、以下の3つのねじれ形配座が可能である。
このうち、左のもの(2つの水素がアンチ形にあるもの)では、メチル−メチルのゴーシュ相互作用が2つであるのに対し、残りの二つ(2つの水素がゴーシュ形にあるもの)では、メチル−メチルのゴーシュ相互作用が3つある。したがって、これらの間のエネルギー差は、3.8 kJ/mol である。
なお、4.24 と同様に定量的なエネルギー図を描くと、以下のようになる。
ただし、以下のようなエネルギーの見積もりによる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−メチル 0 kJ/mol
メチル−メチル 3.8 kJ/mol (青矢印)
重なり形相互作用:
水素−水素 4.0 kJ/mol (緑矢印)
水素−メチル 6.0 kJ/mol (橙矢印)
メチル−メチル 11.0 kJ/mol (赤矢印)
(解答例)
ただし、以下のようなエネルギーの見積もりによる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−臭素 0 kJ/mol
臭素−臭素 (青矢印)
重なり形相互作用:
水素−水素 (緑矢印) 4.0 kJ/mol
水素−臭素 (橙矢印) 7.0 kJ/mol ← 問題 4.28 より
臭素−臭素 (赤矢印)
ここで、およその大きさは、n-butane の C2-C3 結合軸の回転に関するエネルギー(下図)を参照とした。
ただし、以下のようなエネルギーの見積もりによる。
ゴーシュ相互作用:
水素−水素 0 kJ/mol
水素−メチル 0 kJ/mol
メチル−メチル 3.8 kJ/mol (青矢印)
重なり形相互作用:
水素−水素 4.0 kJ/mol (緑矢印)
水素−メチル 6.0 kJ/mol (橙矢印)
メチル−メチル 11.0 kJ/mol (赤矢印)
(解答例)
最大の双極子モーメントを持つ立体配座は、2つの臭素が重なり形をとるもの。
一番安定な配座は、2つの臭素がアンチとなる立体配座である。この形から予測される分子の双極子モーメントはゼロとなるが、実験的に μ = 1.0 D の双極子モーメントが観測されている事実より、2つの臭素がゴーシュとなる立体配座も有意な量だけ存在しており、分子の双極子モーメントに寄与していると考えられる。
1,2-dibromoethane のそれぞれの回転配座に対応する双極子モーメントの方向を矢印で書き込んだ。また、これらの配座のエネルギーの定量的な取り扱いと、これに基づいたそれぞれの配座の寄与の定量的な議論は、以下のようになる。
図の下の数値は、ボルツマン分布より予測される相対的な存在度。
![]() | ||||||||||
1 | : | 1/e(18/2.4) | : | 1/e(5/2.4) | : | 1/e(20/2.4) | : | 1/e(5/2.4) | : | 1/e(18/2.4) |
(解答例)
(a) 7.0 kJ/mol [ 計算式 : 15.0 − (4.0 × 2) = 7.0 ]
(b) 以下の通り。
(解答例)
左図のように、すべての炭素が直線的に伸びた立体配座をとる。このとき、C2-C3 結合軸にそった Newman 投影図(右図)を見ると、大きな置換基である手前のメチル基(C1)と向こう側のエチル基(C4-C5)が互いにアンチになったねじれ形をとっていることがわかる。
(解答例)
左図のように、すべての炭素と2つの塩素が直線的に伸びた立体配座をとる。このとき、C1-C2 結合軸、およびC3-C4 結合軸にそった Newman 投影図(右図)を見ると、大きな置換基である塩素とアルキル基が互いにアンチになったねじれ形をとっていることがわかる。
(解答例)
ただし、アキシャル位の水素は H(a) で示し黄色で、エカトリアル位の水素は H(e) で示し水色で、それぞれ記した。
また、シクロヘキサン環の平面に対して上の水素は赤丸で、下の水素は緑丸で囲んである。アキシャル位の水素6つのうち、半分の3つは環の上方に、残りの3つは環の下方に結合している。また、エカトリアル位の水素6つのうち(ひとつおきの炭素に結合した)3つは環の上方で、残りの3つは環の下方である。
なお、この図を C1-C2 軸および C5-C4 軸方向から見た Newman 投影図と対応させておこう。
この図からも、すべてのアキシャル水素(黄色)が環のなす平面に対して垂直な方向にでており、またエカトリアル水素(水色)が環のペリフェラルな(環の縁の方向を向いた)方向にでていることがわかる。また、赤丸で囲んだ6つの水素(3つはアキシャル、3つはエカトリアル)は、環の上方に結合しており、緑色で囲んだ6つの水素(3つはアキシャル、3つはエカトリアル)は、環の下方に結合している様子も見てとれる。
また、このいす形配座のシクロヘキサンの環反転について考えてみよう。
まず、この「いす形配座」のシクロヘキサンの水素のマーキングはそのままにして、6つの炭素が同一平面内にくるようにしてみよう。Newman 投影図との対応で考えるために、C1、C2、C4、C5 の4つの炭素を固定したまま、C3 を環の上方へ、C6 を環の下方へ折り返す。実際には、隣りあった炭素を交互に上げ下げすることに対応する。(分子モデル等でためしてみると判りやすい。)この動きの際に、炭素−炭素結合の軸に沿ってのねじれ(回転)が生じ、立体配座はねじれ形から重なり形に近づく。
図の中央に示したように、この配座においては、任意の炭素−炭素結合に注目すると、いずれも水素が重なり形となっており、エネルギー的に不利な立体配座である。
C3 の環の上方へ、C6 の環の下方への動きをそのまま続行させると、環反転がおきる(図右)。左側のいす形配座では、環のなす平均的な平面より上のある炭素は、C2、C4、C6 であったのが、環の反転とともに C1、C3、C5 に入れ替わり、同時にエカトリアル位にあった水素はすべてアキシャル位に、またアキシャル位にあった水素はすべてエカトリアル位に移動している。(ただし、水素が結合している方向が環の平均的な面に対して上か下かについては、変化しない。)
(解答例)
シクロヘキサンの環を構成する炭素に1から6までの番号を振り、それぞれに結合した水素(環の上方、および環の下方)について、ある「いす形配座」におけるアキシャルとエカトリアルの関係を表にまとめると、以下のようになる。
反転前 | 反転後 | ||
---|---|---|---|
1位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
下 | アキシャル | エカトリアル | |
2位 | 上 | アキシャル | エカトリアル |
下 | エカトリアル | アキシャル | |
3位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
下 | アキシャル | エカトリアル | |
4位 | 上 | アキシャル | エカトリアル |
下 | エカトリアル | アキシャル | |
5位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
下 | アキシャル | エカトリアル | |
6位 | 上 | アキシャル | エカトリアル |
下 | エカトリアル | アキシャル |
(解答例)
(省略)4.32と同じ表を使って考えてみよ。
(解答例)
cis-体は、2つの置換基が(アキシャル、アキシャル)または、(エカトリアル、エカトリアル)の位置に来るのに対し、trans-体では、環の反転があっても常に(アキシャル、エカトリアル)の組み合わせになる。これらの配座の中で一番安定なのは、立体的に大きな置換基がすべてエカトリアル位にある配座だから、2つの置換基がどちらもエカトリアルに来ることのできる cis-体の方が trans-体にくらべて安定である。(2つの置換基が両方ともアキシャルになる配座は trans-体よりも不安定であるが、より安定な配座のみをとる。)
4.32 の解答例で示した表の一部を抜粋する。
反転前 | 反転後 | ||
---|---|---|---|
1位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
3位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
反転前 | 反転後 | ||
---|---|---|---|
1位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
3位 | 下 | アキシャル | エカトリアル |
(解答例)
反転前 | 反転後 | ||
---|---|---|---|
1位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
4位 | 上 | アキシャル | エカトリアル |
反転前 | 反転後 | ||
---|---|---|---|
1位 | 上 | エカトリアル | アキシャル |
4位 | 下 | エカトリアル | アキシャル |
(解答例)
1,2-dimethylcyclobutane の立体配置と、それに対応する立体配座を、Newman 投影式で示した。
左の立体配置は、cis-体である。右の2つは、trans-体であるが、異なる立体配座をもつ。これらの中では、2つのメチル基がより遠くなった、trans-体のとる中央に示された立体配座が最も安定である。
1,3-dimethylcyclobutane の立体配置と、それに対応する立体配座を示した。
左の2つは、cis-体のもので、環の反転により生じる配座異性体である。右の2つは、trans-体の立体配座であるが、どちらも同じである(上下を入れ替えるように回転させると、重ねあわせることができる)。これらの中では、2つのメチル基がより遠くなった、cis-体のとる左から2番目の立体配座が最も安定である。
なお、次に示す二つのtrans-1,2-dimethylcyclobutane は、互いに光学異性体であるので、厳密には、この二つは互いに重ねあわせることができない。(環の反転などによっても、互いに入れ替わらない。)
(解答例)
二つの立体配座異性体は、環の反転に伴い、次の表のように置換基のアキシャルとエカトリアルが入れ替わるから、下図のようになる。
置換基 | 反転前 1 | 反転後 2 | |||
---|---|---|---|---|---|
光学異性体 A![]() | 1-chloro group 環の上 |
![]() | エカトリアル |
![]() | アキシャル |
2-methyl group 環の上 | アキシャル | エカトリアル | |||
立体ひずみ | 3.8 kJ/mol × 2 | 1.0 kJ/mol × 2 | |||
1.0 kJ/mol* | 1.0 kJ/mol* | ||||
光学異性体 A と B は、環の反転では入れ替わらない。 | |||||
光学異性体 B ![]() | 1-chloro group 環の下 |
![]() | アキシャル |
![]() | エカトリアル |
2-methyl group 環の下 | エカトリアル | アキシャル | |||
立体ひずみ | 1.0 kJ/mol × 2 | 3.8 kJ/mol × 2 | |||
1.0 kJ/mol* | 1.0 kJ/mol* |
(解答例)
二つの立体配座異性体は、環の反転に伴い、次の表のように置換基のアキシャルとエカトリアルが入れ替わるから、下図のようになる。
置換基 | 反転前 1 | 反転後 2 | |||
---|---|---|---|---|---|
光学異性体 A![]() | 1-chloro group 環の上 |
![]() | エカトリアル |
![]() | アキシャル |
2-methyl group 環の下 | エカトリアル | アキシャル | |||
立体ひずみ due to (upper) 1,3-diaxial, and (lower) gauche* interactions, respectively. | 0 kJ/mol | 1.0 kJ/mol × 2 + 3.8 kJ/mol × 2 | |||
1.0 kJ/mol | 0 kJ/mol | ||||
光学異性体 A と B は、環の反転では入れ替わらない。 | |||||
光学異性体 B ![]() | 1-chloro group 環の下 |
![]() | アキシャル |
![]() | エカトリアル |
2-methyl group 環の上 | アキシャル | エカトリアル | |||
立体ひずみ due to (upper) 1,3-diaxial, and (lower) gauche* interactions, respectively. | 1.0 kJ/mol × 2 + 3.8 kJ/mol × 2 | 0 kJ/mol | |||
0 kJ/mol | 1.0 kJ/mol |
(解答例)
都合上(教科書(下)での、糖類の構造式と一致させる目的で)、ここでは教科書とはガラクトースの絵を左右反転して示している。また、環の命名法とは異なった規則により(酸素には番号を振らずに)炭素骨格に1〜6の番号を振っている。
赤で示した水酸基はアキシャルに、それ以外の置換基はすべてエカトリアルにくるようにする。
このような条件を満たすものは、以下の2通りが考えられる。いずれも正解である。
左右の2つは互いに光学異性体の関係にある。下の表を見よ。酸素の位置を好きな位置においたとしても、それぞれの置換基の結合方向が環に対して上か下かで分類すると、この2種類のいずれかと同じであることが判るはずである。なお、天然に多く存在しているのは、青い破線よりも右側の構造のものである。
左の立体異性体(L体) | 右の立体異性体(D体) | |
---|---|---|
1位 ヒドロキシル基 | 下 | 上 |
2位 ヒドロキシル基 | 上 | 下 |
3位 ヒドロキシル基 | 下 | 上 |
4位 ヒドロキシル基 | 下 | 上 |
5位 ヒドロキシメチル基 | 下 | 上 |
(解答例)
可能な2つのいす型配座を書くと次のようになる。ただし、環の番号を振る回り方とそれぞれの置換基が結合する方向(上下)は、入れ替わらないように書いてあることに注意せよ。
すべての置換基がエカトリアル位にくる方のいす型配座(下図、右)の方が安定である。
![]() |
![]() | |
1-hydroxy | 上 | 上 |
アキシャル | エカトリアル | |
2.1 kJ/mol*1 > 3.8 kJ/mol*2 | > 2.1 kJ/mol*5 | |
2-isopropyl | 下 | 下 |
アキシャル | エカトリアル | |
2 × 4.6 kJ/mol*3 | − | |
5-methyl | 上 | 上 |
アキシャル | エカトリアル | |
3.8 kJ/mol*4 | − | |
strain | > 18.9 kJ/mol | > 2.1 kJ/mol |
(解答例)
以下の表のとおり。一番右のカラムが、エネルギーの高い状態、すなわち置換基がアキシャル位にくるものが全体に占める割合。
substituent | strain due to 1,3-diaxial interaction, ΔE | e( ΔE / RT ) |
| |||||||||
(a) R = CH(CH3)2 | 2 × 4.6 kJ/mol | 39.7 | 2.5 % | |||||||||
(b) R = F | 2 × 0.5 kJ/mol | 1.5 | 40 % | |||||||||
(c) R = CN | 2 × 0.4 kJ/mol | 1.4 | 42 % | |||||||||
(d) R = OH | 2 × 2.1 kJ/mol | 5.4 | 16 % |
(解答例)
(a) 一方はアキシャルで、もう一方はエカトリアル。
(b) 一方はアキシャルで、もう一方はエカトリアル。
(c) 両方ともアキシャル、または、両方ともエカトリアル。
(d) 一方はアキシャルで、もう一方はエカトリアル。
(e) 両方ともアキシャル、または、両方ともエカトリアル。
(f) 両方ともアキシャル、または、両方ともエカトリアル。
(解答例)
図左のジエカトリアル配座は、1,3-ジアキシャル相互作用によるひずみを持たないのに対し、図右のジアキシャル配座では、水素−メチル間の 1,3-ジアキシャル相互作用が2組と、メチル−メチル間の 1,3-ジアキシャル相互作用をあわせもつため、おおきなひずみエネルギーを持つ。
(解答例)
1,3-dimethylcyclohexane のジアキシャル配座では、4.43 の解答例で描いた図のように、水素−メチル間の 1,3-ジアキシャル相互作用が2組(青、矢印)と、メチル−メチル間の 1,3-ジアキシャル相互作用(青、太い矢印)とがある。水素−メチル間の 1,3-ジアキシャル相互作用は、一組につき 3.8 kJ/mol であるから、以下の計算により、メチル−メチル間の 1,3-ジアキシャル相互作用の大きさが求められる。
23 kJ/mol − ( 2 × 3.8 kJ/mol ) = 15.4 kJ/mol
なお、この値は、t-butyl 基( -C(CH3)3 )と水素の間の 1,3-ジアキシャル相互作用よりも大きいことがわかる。
(解答例)
下図は、4.43 の解答例( 1,3-dimethylcyclohexane のもの)とも見比べてみること。
図からあきらかなように、1,1,3-trimethylcyclohexane は、3位のメチル基がエカトリアル位にあるいす形配座と、3位のメチル基がアキシャル位にあるいす形配座とがある。
3位のメチル基がエカトリアル位にあるもの
2組の水素−メチル基間の 1,3-ジアキシャル相互作用があるため、ひずみエネルギーは、
2 × 3.8 kJ/mol = 7.6 kJ/mol である。
3位のメチル基がアキシャル位にあるもの
2組の水素−メチル基間の 1,3-ジアキシャル相互作用、および
メチル基−メチル基間の 1,3-ジアキシャル相互作用があるため、ひずみエネルギーは、
2 × 3.8 kJ/mol + 15.4 kJ/mol = 23.0 kJ/mol である。
これら2つの配座で比較すると、3位のメチル基がエカトリアル位にある方がより安定である。また、これらの間のエネルギー差 ΔE は、15.4 kJ/mol であるから、4.41 と同様の計算を行うと、より不安定な配座である3位のメチル基がアキシャル位にある方の配座は全体の中の 0.21 % を占めるに過ぎないことが求められる。
(解答例)
シス−トランス異性体(立体配置異性体)は、以下の2種類のみが存在する。
![]() |
![]() | |
いす形配座-1 |
![]() |
![]() |
0 kJ/mol | 2 × 3.8 kJ/mol = 7.6 kJ/mol | |
いす形配座-2 |
![]() |
![]() |
3 × 15.4 kJ/mol = 46.2 kJ/mol | 2 × 3.8 kJ/mol + 1 × 15.4 kJ/mol = 23.0 kJ/mol |
(解答例)
trans-decaline は分子内に 1,3-ジアキシャル相互作用を持たないが、cis-decaline では、黒で描いたシクロヘキサンから結合している青の環を構成している CH2 のように、アキシャル位にくる置換基があるとみなせるから、アキシャル水素との間に 1,3-ジアキシャル相互作用を持つ。
黒で描いた環を中心に考えると、アキシャル位の青い CH2 −ピンク水素の2組の 1,3-ジアキシャル相互作用が、また、青で描いた環を中心に考えても同じようにアキシャル位の黒い CH2 −緑の水素の2組の 1,3-ジアキシャル相互作用がある。ところで、図からわかるようにひとつは重複して数えているからこれを考慮すると、総合して3組の 1,3-ジアキシャル相互作用があるので、
3 × 3.8 kJ/mol = 11.4 kJ/mol の 1,3-ジアキシャル相互作用に由来するひずみエネルギーをもつ。
trans-decaline
cis-decaline
橋頭位の水素は赤い結合で表した。
(解答例)
trans-decaline
青で示した方の環を構成する2つのメチレン( -CH2- )(青C3、青C6)がともに黒のシクロヘキサン環のアキシャル位にあるとき、残り2つの炭素(青C4、青C5)だけではこの2つのメチレンの間をつなぐことができない。(結合角が109.5度であることを思い出すこと。)
従って、トランスデカリンの一方のシクロヘキサン環に接した2つのメチレンは必ずともにエカトリアル位になければならない。このため、反転することができない。
cis-decaline
シスデカリンは図のように容易に反転させることが可能である。
(解答例)
左はcis-bicyclo[4.1.0]heptane について、右はtrans-bicyclo[4.1.0]heptane について描いたものである。
まずシクロヘキサン部分をいす形にした配座で描く(上段)と、C1-C6 軸に沿って見た時、この2つの炭素から出ている置換基はねじれ型になることになる。ところが、C1 と C6 の両方から C7 のメチレンへ結合しているから、青で描いた矢印のような回転(C1-C6 軸のまわりのねじれ)により、重なり形配座になる必要がある。
cis-bicyclo[4.1.0]heptane では、配座をいす形から舟形(左、中段)にしたり、下段のような配座など、比較的安定な配座をとることができる。(これらのうち、どれが一番安定であるかは、ここでは議論しない。)
ところが、trans-bicyclo[4.1.0]heptane では、C1-C6 軸について重なり形をとったときに、C2-C1-C6-C5 の二面角が120度となってしまうため、環に非常におおきなひずみが生じる。
このため、bicyclo[4.1.0]heptane は、トランス体よりもシス体の方が安定である。
(解答例)
立体配置異性体は、8種類が考えられる。このうち、一番安定なものは、図一番下のようにメチル基がシクロヘキサン環に対して上下上下上下となっている、すべての隣りあうメチル基がトランスとなっているもので、メチル基がすべてエカトリアル位に結合したいす形配座をとる。
立体配置 | 立体配座 | |||
---|---|---|---|---|
いす形配座−1 | いす形配座−2 | |||
1,3-diaxial interaction | gauche interaction | 1,3-diaxial interaction | gauche interaction | |
steric strain | steric strain | |||
![]() | ![]() | |||
3 × 15.4 kJ/mol | 6 × 3.8 kJ/mol | 3 × 15.4 kJ/mol | 6 × 3.8 kJ/mol | |
69.0 kJ/mol | 69.0 kJ/mol | |||
![]() | ![]() | |||
1 × 15.4 kJ/mol + 2 × 3.8 kJ/mol | 6 × 3.8 kJ/mol | 3 × 15.4 kJ/mol + 2 × 3.8 kJ/mol | 4 × 3.8 kJ/mol | |
45.8 kJ/mol | 65.2 kJ/mol | |||
![]() | ![]() | |||
1 × 15.4 kJ/mol + 4 × 3.8 kJ/mol | 5 × 3.8 kJ/mol | 1 × 15.4 kJ/mol + 4 × 3.8 kJ/mol | 5 × 3.8 kJ/mol | |
49.6 kJ/mol | 49.6 kJ/mol | |||
![]() | ![]() | |||
2 × 3.8 kJ/mol | 6 × 3.8 kJ/mol | 4 × 15.4 kJ/mol + 2 × 3.8 kJ/mol | 2 × 3.8 kJ/mol | |
30.8 kJ/mol | 76.8 kJ/mol | |||
![]() | ![]() | |||
1 × 15.4 kJ/mol + 4 × 3.8 kJ/mol | 4 × 3.8 kJ/mol | 1 × 15.4 kJ/mol + 4 × 3.8 kJ/mol | 4 × 3.8 kJ/mol | |
45.8 kJ/mol | 45.8 kJ/mol | |||
![]() | ![]() | |||
4 × 3.8 kJ/mol | 6 × 3.8 kJ/mol | 2 × 15.4 kJ/mol + 4 × 3.8 kJ/mol | 4 × 3.8 kJ/mol | |
38.0 kJ/mol | 61.2 kJ/mol | |||
![]() 光学異性体が存在する | ![]() | |||
2 × 15.4 kJ/mol + 4 × 3.8 kJ/mol | 3 × 3.8 kJ/mol | 4 × 3.8 kJ/mol | 5 × 3.8 kJ/mol | |
57.4 kJ/mol | 34.2 kJ/mol | |||
![]() | ![]() | |||
0.0 kJ/mol | 6 × 3.8 kJ/mol | 6 × 15.4 kJ/mol | 0.0 kJ/mol | |
22.8 kJ/mol | 92.4 kJ/mol |
(解答例)
ねじれ形配座においては gauche 相互作用の和が、重なり形配座においては3箇所の重なり形相互作用の和が、それぞれのひずみエネルギーとなる。
ねじれ形 | 重なり形 | |||
---|---|---|---|---|
(a) |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
3.8 kJ/mol | 7.6 kJ/mol | 18.0 kJ/mol | 21.0 kJ/mol | |
(b) |
![]() |
![]() | ||
7.6 kJ/mol | 23.0 kJ/mol | |||
(c) |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
7.6 kJ/mol | 11.4 kJ/mol | 23.0 kJ/mol | 26.0 kJ/mol | |
(d) |
![]() |
![]() | ||
15.2 kJ/mol | 28.0 kJ/mol |
(解答例)
のように番号を振るとする。
置換基 | 立体配座−1 | 立体配座−2 | |
---|---|---|---|
![]() | |||
1-OH | 上 | エカトリアル | アキシャル |
2-OH | 上 | アキシャル | エカトリアル |
3-OH | 上 | エカトリアル | アキシャル |
4-OH | 下 | エカトリアル | アキシャル |
5-OH | 上 | エカトリアル | アキシャル |
6-OH | 下 | エカトリアル | アキシャル |
(解答例)
いす形配座においては、cis-1,3- 位の2つの置換基は、ジエカトリアルまたはジアキシャルの位置にくる。より安定な配座においては、ジエカトリアルなので、分子内にひずみの原因となるような相互作用はない。したがって、2つの置換基がジアキシャルにあるときの、3つの 1,3-ジアキシャル相互作用(メチル基と水素、塩素と水素、メチル基と塩素)の和が安定性の差、15.5 kJ/mol である。
メチル基と水素、塩素と水素の 1,3-ジアキシャル相互作用は、表 4.2 より、3.8 kJ/mol、1.0 kJ/mol であるから、メチル基と塩素の間の 1,3-ジアキシャル相互作用の大きさは、
15.5 − ( 3.8 + 1.0 ) = 10.7 kJ/mol である。
(解答例)
1-norbornene の二重結合の周囲のみとり出してみると、次図のようになる。すなわち、二重結合はおよそ 90度ねじれており、2つの炭素の p 軌道もほぼ直交している。このため、軌道の重なりがないため、安定な二重結合とならない。
(解答例)
図のようになるので、
(a) エカトリアル
(b) アキシャル
(c) エカトリアル
(解答例)
(解答例)
tert-butyl 基がアキシャル位を占めたときの水素との 1,3-ジアキシャル相互作用は1組につき 11.4 kJ/mol あるのに対し、塩素がアキシャル位を占めたときの水素との 1,3-ジアキシャル相互作用は1組につき 1.0 kJ/mol である。
このため、cis-1-tert-butyl-2-chlorocyclohexane のように、2つの置換基のうちどちらかがアキシャル位、どちらかがエカトリアル位を占めるような立体配置異性体においては、tert-butyl 基がエカトリアル位にある方が、もう一方に対して 20.8 kJ/mol だけ安定である。これは、ボルツマン分布から考えて、300 K の温度では、 99.98 % の分子でtert-butyl 基がエカトリアル位にあり、塩素がアキシャル位にあることを示す。
trans-1-tert-butyl-2-chlorocyclohexane では2つの置換基がともにエカトリアルになることができ、ジアキシャル体に対し 24.8 kJ/mol だけ安定である。これは、ボルツマン分布から考えて、300 K の温度では、 99.99 % 以上の分子でtert-butyl 基、塩素ともにエカトリアル位にあることを示す。
従って、ほとんどの分子において塩素がアキシャル位にあるcis-体で、より速く脱離反応を示す。
(解答例)
常にエカトリアル位にくる、4位のtert-butyl 基の「上下」を、環の下であるような形に固定して考えることにする。(1位、もしくは 3位の水酸基を固定して考えても、もちろん構わない。ただし、その場合は、常に 4位のtert-butyl 基をエカトリアル位にくるように、適宜、環の反転をおこなってやりながらいす形配座を描くこと。)
この立体異性体(3つの置換基がすべて同じ方向(下方)を向いているもの。教科書の図と同じ立体異性体。ただし、教科書の図(3つがすべて環の上方にある)とは光学異性体の関係にあるものである。)は、アセタールになり、酸素を2つ含んだ6員環をとることができる。
ここに示した3つの立体配置異性体では、水酸基の酸素の間の距離が遠すぎるから、アセタールになることはできない。