田島 進 先生 退官記念事業趣意書

拝啓 若葉の頃,皆様にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

 さて,田島 進先生におかれましては,本年3月末日をもちまして群馬工業高等専門学校教授をめでたく定年退官されました。

 先生は1964年3月に群馬大学工学部応用化学科をご卒業後,スズキ自動車工業株式会社に入社され,1967年2月に通商産業省工業技術院東京工業試験所(現:独立行政法人 産業技術総合研究所)に奉職されました。1975年2月東京大学より理学博士の学位を授与され,1975年4月に群馬工業高等専門学校工業化学科に助教授としてご着任されました。1983年4月には教授にご昇任され,以来20年以上の永きにわたり群馬工業高等専門学校 工業化学科・物質工学科の教授として群馬高専の発展と学生の教育にお力を尽くされました。その間,オランダ・アムステルダム大学のNico M. M. Nibbering教授のもとで博士研究員として質量分析の研究に1年間従事されました。

 研究面では,東京工業試験所に入所以来,今日まで一貫して質量分析の研究に情熱を注がれました。特にMIKEスペクトル法の可能性にいち早く注目され,この手法を用いて,有機ケイ素化合物,有機フッ素化合物など様々な基礎的有機イオンの分解機構を解明されています。その研究成果は,110報にも及ぶ研究論文として国際的学術誌に掲載され,質量スペクトルの理論的基盤を形成する研究として,国際的に高く評価されています。質量分析論文誌「Rapid Communications in Mass Spectrometry」の編集に携わるなど,広く世界に貢献されました。一方,日本質量分析学会の発展にもご尽力され,1998年には,高崎市で開催された「第46回質量分析総合討論会」の実行委員長を務められ,日本質量分析学会の学会誌「Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan」の編集委員長を務められています。これらのご業績により,2002年に日本質量分析学会「学会賞」を受賞されました。

 先生は教育に対しても並々ならぬ情熱を持って当たられ,物理化学,物理化学特論,物質工学実験など,主に基礎的科目の講義と実験を担当されるとともに,物理化学研究室の教授として,卒業研究を通じて研究の醍醐味を教えて下さいました。先生の教育,研究への情熱と真摯な姿勢は,多くの学生に感銘を与えたことと思います。さらに工業化学科および物質工学科のクラス担任,学科主任,クラブ顧問および同窓会顧問等を通して多くの学生がお世話になりました。また,教務主事,寮務主事として群馬高専の運営にご尽力されました。 本年2月10日に開催された「田島先生最終講義」には,数多くのOB・OG,学生・教職員が駆けつけ,群馬高専の大講義室が満室になりました。花束をお渡ししたくても,順番待ちをしなくてはいけないような盛況ぶりも,ひとえに田島先生のお人柄ゆえと存じます。

 ご退官後は,小説家を目指されるとお話しされておりました。書斎やアトリエとしてお使いになるとご自宅近くに購入された「田島城」(学生の通称)で過ごされる時間が長くなるのでしょうか。

 このたびの群馬高専ご退官を機会に,先生の教えを受けた者が,先生ご夫妻を囲んで祝賀の宴を開き,心から謝意を表したいと存じます。また記念事業として「田島進先生記念論文集」を発刊し,記念品として贈呈したいと存じ上げます。つきましては,この趣旨にご賛同いただき,万障お繰り合わせの上,御出席下さいますようお願い申し上げるとともに,記念品代の醵金にご協力をお願い申し上げます。


敬具

平成17年7月吉日

田島 進 先生退官記念事業

発起人代表 飛田 成史(工業化学科6期)